瀬奈じゅん のインタビュー記事が到着!
ミュージカル「サムシング・ロッテン!」

ルネサンス時代のイギリス、劇団を経営するボトム兄弟が時代の寵児シェイクスピアに対抗心を燃やし、世界初の“ミュージカル”を作ることに……!?

ブロードウェイで2015年に初演され大ヒットした人気コメディ・ミュージカル『サムシング・ロッテン!』。古今東西の演劇、ミュージカルをパロディにしながら、演劇愛、ミュージカル愛がたっぷり詰まったこの作品、日本では福田雄一の演出で2018年に初演され大いに話題になった。7年ぶりの再演となる今回、初演に引き続き出演するのが、主役のニックを演じる中川晃教と、その妻ビーを演じる瀬奈じゅんだ。瀬奈に作品の魅力と再演への意気込みを聞いた。


――『サムシング・ロッテン!』、7年ぶりの再演ですね。初演から続投するのが瀬奈さんと……。

アッキー(中川晃教)だけなんです、プリンシパルでは。アンサンブルさんは何人かいるのですが。寂しい気持ちもありますが、新しいキャストの皆さんとどんな化学反応が起こるのか、楽しみです。


――初演は、どんな思い出がありますか?

楽しかったです! 楽しい記憶しかないですね……お芝居をすることが、本当に楽しかった。私個人としては体力的にはさほど大変ではなく、いわゆる美味しい出番()。ただ、一場面一場面が濃かったので、それはちょっと大変でしたけど。お稽古も、まだコロナ前だったので、みんなでご飯を食べに行ったりととても和気藹々としていました。そうそう、ちょうどこのお稽古中に『今日から俺は!!』(NTV系/福田雄一が脚本・監督を手掛け、瀬奈も出演していた)が放送されていたんです。稽古に行くたびに福田さんが「すごい評判いいんだよ!」と喜んでいらっしゃったのを覚えています。


――福田さんや共演者の方と「またやりたいね」というような話をしていらしたのでしょうか。

いえ、私からやりたいと言ったことはないし、まさか再演すると思ってもいませんでした。でも実はもっと前に再演の話があったんです。それがコロナ禍になって延期となってしまったので、今回7年ぶりということになった。ずいぶん月日が経ってしまったので「ビー役、まだ私でいいのかな」という思いも少しありました。ただ、私は初演から関わった作品が再演される経験があまりないんです。だから、それはすごく嬉しかったですね。

――中川さんとの夫婦役はいかがでしたか?

アッキーが可愛かったです。守ってあげたくなりました。アッキーは私に振り回されていましたが()。私……というかビーが好き放題やって、ニックを振り回し、ニックが間髪入れずにツッコんでいく関係性なので、アッキーは大変そうでした()


――ビーはどういう人物ですか?

けなげな人なんです。本当にニックのことが大好きで「あなたのために生きていく」というところがブレない、強い女性。ニックに「あなたの右腕になるの」とかいがいしく尽くすのですが、それが空回りして暴走しちゃう。だから私は、なるべく“思いを汲まない”ようにしていました。もちろん暴走しながら、役者としては冷静に演じていましたけれど。


――「男のするようなことだ」と言われることをやっちゃうようなところは、現代的な女性かなとも思います。

そうですね。ただ、それがすべて「ニックのため」なんです。自分のやりたいこと、イコール彼のため、となるのがすごくいいし、そこがビーの可愛らしいところでもあるなと思います。


――瀬奈さんは強い女性、カッコいい女性を演じることが多い中、ビーはどこかフンワリしていて、観ていて幸せな気持ちになりました。

ありがとうございます。たしかにワガママ女優とか、気の強い役が多いので、ホンワカした人物を演じることが珍しい。いや、ビーも結構、気は強いですけど()、この作品での私の役割はまさにホンワカだと思っています。こういう役柄、大好きですので、頑張ります!


――かなり身体も張っていらした記憶がありますが、再演ではどうなるか、福田さんからお聞きになっていますか?

まだ何も聞いておらず、どうなるのかなと思っています。ただ、翻訳が新しくなりますので、そこは楽しみなところです。


――2025年版の翻訳・訳詞は福田響志さん

もう「なるし君」と呼べないくらいの売れっ子先生なのですが、彼は本当にセンスがいい。外国語で書かれた戯曲、特にコメディは日本語にするのはとても難しいのですが、彼は自分のセンスでちゃんとコメディに昇華させる。セリフを話していても、ひっかかりが何一つない。初演のものもとても楽しかったですが、新しい訳でこの物語がどう紡がれていくのか、期待しています。


――改めてこの『サムシング・ロッテン!』という作品の魅力はどういうところにあると思いますか?

キャラクターがそれぞれ本当にチャーミングで、憎めない。また、プリンシパルが6人って、この規模のミュージカルとしては少ない方だと思うんです。その分、役者一人一人の力が試される作品ではあると思うのですが、そこもまた魅力だなと思います。


――新キャストとしては、瀬奈さんと共演機会も多い石川禅さんなどもいらっしゃいます。

そうなんです、私も配役を見て真っ先にワクワクしたところが禅さんのノストラダムスなんです! ミュージカル界の諸先輩方の中で、一番仲良くさせてもらっている方で、大尊敬する先輩で、大好きな俳優さんです。また(初演の)橋本さとしさんとは全く違うノストラダムスになるんだろうなと思っています。禅さんは、福田さんの作品に出演するのは初めてだとおっしゃっていました。禅さんの新しいことにどんどんチャレンジする姿勢はいつも尊敬しますが、初めての福田さんの稽古場で四苦八苦する禅さんを見るのも楽しみですね()


――大東立樹さん、矢吹奈子さんとは初共演かと思いますが、加藤和樹さんとは?

(お芝居では)初めましてなんです、すごい意外だと皆さんに言われます()。コンサートでご一緒したことはありますが、あまりお話したこともない。でも初めての方とお仕事をするのはいつも楽しい。大東さん、矢吹さんも、まだ存じ上げないのですが、フレッシュで可愛らしい方。どんなお芝居をされるのか楽しみにしています。


――福田さんが情報解禁時に「ミュージカルをこよなく愛する人たちのためのミュージカル」とコメントされていました。実際、既存作のパロディが山ほど出てきます。初演を拝見して、パロディが全部わかった自信がありませんでした(笑)。

私も全部はわかっていないと思う()。いくつパロディとして取り上げられているかすら、わからない()


――逆に「初めてミュージカルを見るよ」という方にアピールするとしたら?

「なんでミュージカルって突然歌いだすの?」「なんで踊りだすの?」という疑問があって、ミュージカルを観ることができないという方がいらっしゃいますよね。そういう方にこそ観てほしい! そこを笑っちゃっていい作品ですし、「なんで歌うんだろうね、でもそれが楽しいんだよ」という曲もあります。単純に歌って踊ることが楽しいと思うんです。そのものずばりの『A Musical』というナンバーでは、突然ミュージカルらしい服を着た人たちが出てきて、ガラリと雰囲気が変わったりしますし、くだらなさもあるけれど、すごく楽しい()。あとは、急にロックが始まったかと思えば、童謡のような音楽もある。色々なジャンルの音楽があるというのも面白いところだと思います。


――最後に、2025年版『サムシング・ロッテン!』への意気込みをお願いします!

また『サムシング・ロッテン!』の世界に入れることが何より楽しみです。メンバーはアッキーと私だけ残って、ほかはガラリと変わるので、稽古場からどんな雰囲気になるのかも楽しみですし。私自身としては「7年ぶりに再演」という経験はなかなかないことなので、7年前の自分を、表現者としてちゃんと超えていきたいなと思います。

(取材・文:平野祥恵)

【 公演詳細 】

ミュージカル「サムシング・ロッテン!」
2025/ 12/19(金)~1/2(金)
東京国際フォーラム ホールC