「ポール・モーリア “ラヴ・サウンズ“ オーケストラ」コンサート
佐々木新平氏インタビュー

ポール・モーリアの生誕100周年を記念した「ポール・モーリア “ラヴ・サウンズ“ オーケストラ」コンサートが7月31日(木)・8月1日(金)に東京国際フォーラム ホールAで開催される。
フランスが生んだ偉大な音楽家、ポール・モーリアは「恋はみずいろ」「オリーブの首飾り」など、数多くの名曲を生み出し、“イージー・リスニング”界のトップに君臨し続けた。1969年に初の日本でのコンサートを開催して以降、およそ1000回に及ぶ公演を行ってきた。世代を超え、誰もが親しみやく、気づけば口ずさんでしまう。そんなポール・モーリアの音楽は時代を超えていつも輝いている。
今回のコンサートは、イレーヌ夫人の賛同を得て、全曲オリジナルスコアによる世界唯一の“公式”コンサートとなる。演奏をするのは、70年代半ばから一世風靡した“LOVE SOUNDS(ラヴ・サウンズ)”をシンボルに日本のトップ・ミュージシャンたちが集結した「PAUL MAURIAT “LOVE SOUNDS” ORCHESTRA(ポール・モーリア “ラヴ・サウンズ” オーケストラ)」。そして、ポール・モーリア自身を彷彿とさせるエレガントな指揮で多方面で活躍する佐々木新平が指揮を務める。貴重な“公式コンサート”の指揮を任された佐々木が、ポール・モーリアの魅力、そして今回のコンサートへの思いを語った。

――ファン待望の公式コンサートが開催されますが、指揮を務められることになった経緯から聞かせてください。

佐々木:キョードー東京さんとはこれまでに、映画音楽を演奏する“シネマコンサート”をはじめ、いろんなコンサートをやらせていただきました。そんな中でポール・モーリアの生誕100周年を記念したコンサートが開催されることが決まり、ポール・モーリア自身もクラシックから自作のオリジナル曲、アレンジしたカバー曲まで、いろんなジャンルをクロスオーバーしたレパートリを持っている音楽家ということで、指揮者としてクラシックに限らずいろんなステージを経験してきた僕にキョードー東京さんが白羽の矢を立てていただいたんだと思います。

――佐々木さんがポール・モーリアの音楽に最初に触れたのはいつですか?

佐々木:僕自身は、ポール・モーリアのコンサートを生で見てきた世代ではありませんが、親がレコードを持っていて、それをかけている時に聞いたのが最初です。3歳くらいから、食事の後にポップスや童謡など、電子オルガンで弾いて聴かせてくれていて、その中にポール・モーリアの「涙のトッカータ」がありました。その時は曲名を知らずに聴いていたんですけど、後々、ポール・モーリアという音楽家の存在を知り、楽曲と曲名が一致しました。改めて聴いてみて、「やっぱりいい曲だなぁ」「この曲、大好きだったなぁ」と実感しましたし、僕の音楽のルーツの一つでもあるということも実感しました。

――“イージー・リスニング”とカテゴライズされることが多いポール・モーリアの楽曲ですが、特徴というと?

佐々木:聴き心地の良さというのが大きいと思います。ノンストレスで聴けて、感情を寄せやすい音楽だと思いますし、幼少期に初めて聴いて、その後も耳にする機会はたくさんあっって、今回指揮を務めさせていただくことになって改めてじっくり聴きましたが、いつ聴いても、今聴いても新鮮に感じます。

――“変わらない良さ”が、いつまでも新鮮に感じられる理由なのかもしれないですね。

佐々木:そう思います。サウンドに関しても、オーケストラのアコースティックサウンドも使いますし、シンセサイザーもチェンバロも使う。そのサウンドを表現すると“古くて新しい”という感じです。日本で初めてコンサートしたのは55年くらい前だと思いますが、その時にはすでに“ポール・モーリア”サウンドが確立していて、そこから変わっていないんだと思います。あと、メロディーの良さも大きな魅力の一つです。斬新さもありながら、耳に心地いいメロディーで、聴けばすぐに口ずさめます。歌ものではないので歌詞はありませんが、言葉がないからこそ、メロディーラインが歌詞以上に伝えてくれているんだと思います。

――メロディーとサウンドで、何か情景などが見えてくる曲が多いように感じます。

佐々木:「恋はみずいろ」や「オリーブの首飾り」「涙のトッカータ」「エーゲ海の真珠」といったタイトルが付いていますが、曲とタイトルのイメージがピッタリなのもすごいなと思います。

――たくさんの楽曲がありますが、今回のコンサートで演奏する曲目を決めるのは大変だったのでは?

佐々木:僕も知らない曲がたくさんありますので、日本公式ファンクラブの代表をされている小渕(隆志)さんに協力していただきました。小渕さんは全曲知っていて、全コンサートの記録も持ってらっしゃるんです。今回のコンサートの演奏曲も小渕さんに決めていただいて、激しい曲から物悲しい曲、穏やかな曲など幅広い楽曲がセレクトされています。楽曲それぞれにいろんな感情が込められていますので、ライティングなどのステージセットとも相まって、聴く人たちの感情にも寄り添いつつ、一つのエンターテインメントショートして楽しんでいただけると思います。

――演奏するPAUL MAURIAT “LOVE SOUNDS” ORCHESTRAの特徴は何ですか?

佐々木:通常のオーケストラの編成に加えて、トランペットが入っていたり、ドラムセットなどのバンド的な楽器もあり、ポップスも表現できます。チェンバロ奏者がいて、ピアニストもいて、というハイブリッドな形になるんですが、これも50年以上前から同じスタイルなので、ポール・モーリアの音楽世界を再現するのにふさわしいオーケストラだと思っております。

――今回のコンサートが“公式”であるというのもファンにとってうれしいところだと思いますし、重要なことでもありますよね。

佐々木:はい。イレーヌ夫人が賛同していただいて、オリジナルスコアをお貸しいただいたので“公式”としてコンサートを開催することができました。往年のファンの方もこだわりをお持ちだと思いますので、オリジナルスコアで演奏できるのは本当にありがたいことと感じています。もう一つ、フライヤーなどに載っている私の写真ですが、着ている白い衣装はポール・モーリアご本人が着られていたものなんです。レプリカではなく本物です。こちらもイレーヌ夫人が寄贈してくださいました。最初に、僕が指揮者に選ばれた経緯を話ししましたが、偶然かもしれませんが、ポール・モーリアと僕が同じサイズで、その衣装が着れたというのもひょっとしたら理由の一つだったのかもしれません。そう考えると、今後、このプロジェクトは続いていくと思っておりますので、体型を維持して、この衣装を着続けられるように努力したいなと思っています(笑)。

――では最後に、7月31日(13時開演と追加公演の17時30分開演の2公演)、8月1日の2日間、東京国際フォーラム ホールA、8月17日の大阪フェスティバルホールで開催されるコンサートをどんなふうに楽しんでいただきたいですか?

佐々木:ポール・モーリアの音楽は全世代向けの音楽です。ポール・モーリアのコンサートを体験されてきた往年のファンの皆様は、その音楽の良さをよく知ってらっしゃいますので、下の世代の人たち、自分の子どもや孫といった家族で来ていただきたいと思っております。きっとそれぞれの世代の方がいろんなことを感じると思いますし、新しい発見もあると思います。誰が聴いても気持ちよく聴ける音楽がポール・モーリアの楽曲の魅力なので、オーケストラの生演奏でその良さを感じていただければうれしいです。

取材・文=田中隆信

【 公演スケジュール 】

< 東京公演 >

2025年7月31日(⽊) 13:00開演 (12:00開場)
2025年7月31日(木)17:30開演(16:30開場)※追加公演
2025年8月1日(金) 13:00開演 (12:00開場)
国際フォーラム・ホールA

< 大阪公演 >

2025年8月17日 (日) 13:00開演(12:00開場)
フェスティバルホール